とある日

学校でシャボン玉を飛ばした。

前日に特に意味もなく、何となく買ったのだ。

静かな校舎の至る所で友人と一緒に無数に飛ばしてきた。

 

❍。

 

「シャボン玉って儚いねぇ」

 

そう言いながら友人も教室の中でシャボン玉を飛ばした。

少しして、全部消えた。

 

「露命だね」

現代文で習った言葉を使ってカッコつける。

 

美しいのにどこか弱々しく、まるで露のように儚い命。

シャボン玉はまさにそうである。

幻想的で美しいのに、あの形で存在できる時間が短すぎる。

それゆえ、儚い。

 

「シャボン玉以外にも儚いものってあるのかな」

友人が沢山のシャボン玉に包まれながら言った。

 

「儚いもの………」

頭の中で四季を思い浮かべてみる。

春だったら、桜。

夏は 校庭の隅に落ちた氷とか、プールサイドの水溜まりとか。

秋は、なんだろう。移行期間になってしまった夏服とか、金木犀かな。

冬は 街に降りた霜と雪だるまとか。

 

とりあえずこれくらいかも。

うーーん。

「全部写真にして取っておきたいな」

 

 

「そっか」

彼女はまたシャボン玉を吹いた。

無数の透明に包まれて消え入りそうだったから、思わず息を飲んでしまった。

彼女もまた、儚い。