日々常々

「わかんないなぁ」

 

今日もテレピン油の匂いが充満している部室で現代アートの画集を見ている。

最近見ているのは村瀬恭子さんの画集である。

ページをめくる。

 

骨が抜かれたような柔らかな手足、水に頭まで浸かった時のような浮遊感、遠近感が分からない空間、常に目を閉じているか後ろを向いている少女。

彼女の作品の特徴は簡単に言うとこの4つだと思う。他にもあるだろうけど、私が作品を見て感じたのはこの4つである。

風や水になびく(というより一体化の方が近い気がする)髪や手足を描くことで、その感覚を見る人に伝達しようとしているらしい。たしかに、それを言われたらそう見える。どの作品にもいる少女が水や大気と一緒に浮いている。それから、空間にあるもの同士の位置感覚が分からないのも分かる。まるで奥行の感覚が無視されてるような…、、平面の世界で、少女が感じている感覚を見せることにとても注意を払っている。…………気がするような、しないような。

 

むずかしいなぁ。

一目見ただけでこれらを感じたり理解するのは無理だ。

何回も見て、評論を見て、彼女が着想を得たもの、モチーフの意味、絵画で表現したいものを少しずつ理解する。そうじゃないと理解は無理に等しい。

 

顧問の先生曰く、彼女は現代アートの中でも難しい作品を描く人だという。

 

どおりで、作品の魅力を発見するのが難しいわけだ。

 

全ページを見終わった。

 

多分生で見たら圧倒されるんだろうな、彼女が表現したい生々しい体感感覚が感じ取れて。

彼女の魅力は完全に理解した訳では無いが、ほぼ毎日見るほどの魅力があることだけは分かっている。

 

いつか彼女の作品を見て、表現したいことを理解できる日はくるのだろうか。